第1章 アドラー心理学の基本理論
本章では、アドラー心理学の全体像について解説します。
アドラー心理学の要となる5つの理論と1つの技法、そして1つの価値観について紹介し、ズバリ、アドラー心理学がどんな心理学なのか、どのような考え方で成り立っているのか、それぞれの理論がどのようにつながっているのか...などを浮き彫りにします。
《こんな人にオススメ》
✔︎初めてアドラー心理学に触れる方
✔︎用語だけ知っているけど、それぞれの意味があまりわからないとき
✔︎主要な理論についておさらいしておきたいとき
アドラー心理学の全体像
ここでは、アドラー心理学の全体像を語る上では欠かせない理論を、厳選して解説します。
ポイント
①人生は自分が主人公
・人は環境や過去の出来事の犠牲者ではなく主人公
・自ら運命を創造する力がある
②人の行動には目的がある
・大切なのは過去の原因ではない
・未来の目標を見据えている人間の行動には、その人自身の意思を持った目的がある
③人は心も身体も結びついたたった一つの存在(全体論)
・人は心の中で矛盾する生き物ではない
④誰もが自分だけのメガネを通してものを見ている(認知論)
・人は、自分の主観を通して物事を把握する
⑤全ての行動には相手役がいる(対人関係論)
・人のあらゆる行動は、相手役が存在する対人関係である
そのほか「勇気づけ」と「共同体感覚」
5つの理論と並んで重要なのが「勇気づけ」の技法と「共同体感覚」という価値観です。
ポイント
困難を克服する活力を与えること(勇気づけ)
・勇気づけとは、困難を克服する活力を与えること
・勇気づけとは「褒める」ことでも激励することでもない
・勇気づけは、元気な人をより元気にするだけでなく、うつ状態などの人に活力を与えることもできる
・アドラー心理学では、前述した5つの理論をもとに、「勇気づけ」の技法を使ってアプローチしていく
ポイント
仲間とのつながりや絆の感覚(共同体感覚)
・共同体感覚とは、その人それぞれの家族や地域、職場などの中での、所属感・共感・信頼感・貢献感を総称したもの
・共同体感覚は、精神的な健康のパロメーターでもある
・アドラー心理学の重要な価値観として、「共同体感覚」を高めることを教育やカウンセリングの目標としている
勇気づけ→自己決定性→目的論→全体論→認知論→対人関係論→共同体感覚
アドラー心理学の5つの理論
ここでは、アドラー心理学の5つの理論の基本的な考え方のポイントを解説します。
1 自己決定性置かれた環境をどう捉え、どのように対応するのかそれを決めるのは自分自身
人には、自ら運命を創造する力があります。決して環境や過去の出来事の犠牲者ではありません。アドラーは「人は自分の運命の主人公である」「人は自分自身の人生を描く画家である」といっています。
劣等感・劣等性
・「自己決定性」と後述する「目的論」と密接な関係があるのが「劣等感」「劣等性」
・「自己決定性」「目的論」の考え方で目標に向かって前向きに生きると、劣等感を味方につけることもできる
ポイント
あなたをつくったのはあなた、あなたを変えうるのもあなた
・アドラー心理学は、育ってきた環境やハンデなどが性格形成に影響を与えることは認めている
・ただ、それらの影響をどう解釈し、そこからどう態度を決めるかは自分次第
・人が育っていく上で、遺伝などの身体面や環境の影響はあるが、最終的にその人の性格を決める要因はその人自身だと捉えている
●判断基準は建設的か非建設的か
・何かを決めるとき、どの方向に向かって自己決定するのかが重要
・私たちは、困難に出会った時、どうしても自分の中での「よい」「悪い」か「正しい」「間違っている」という判断をしてしまいがち
・アドラー心理学では、判断基準は「自分と他者にとって建設的な方法か、それとも非建設的か」であるかが重要だと捉えている